By ナオ船長
- 船乗りの1日のスケジュール
- 一ヶ月の労働時間|残業時間
- 船種による労働時間の違い|船を選ぶ時のポイント
船乗りの残業|労働時間|結論
- 船乗りの1日のスケジュール
・記事内参照 - 一ヶ月の労働時間|残業時間
・労働時間|200〜250h
・残業時間|40h前後
※船による - 船種による労働時間の違い|船を選ぶ時のポイント
・船によって労働時間は大きく変わるので、どのようなものを運び、どのような作業があるのかを熟知しておく必要がある
船乗りの残業感覚
船にはあまり残業をしているという感覚がありません。
ワッチ(見張り)業務|荷役の他にも、
- 船内清掃
- 書類整理
- 食事を作る
- ロープの手入れetc
と雑務が無数にあります。
職場と自宅が同じなので常に働いているという感覚になります。なのでうまく休むことも仕事の内となり、その他緊急時には速やかに対処することも必要です。
船乗りの労働時間|1日のスケジュール
まず始めに航海中の航海士の仕事としてワッチ(見張り)というものがあり、3交代制で1人が4時間×2行います。
▶︎航海士A(ゼロヨン)
→0000〜0400 & 1200〜1600
▶︎航海士B(ヨンパー)
→0400〜0800 & 1600〜2000
▶︎航海士C(パーゼロ)
→0800〜1200 & 2000〜2400
ということになります。船によって固定ワッチ制、変則ワッチ制というものがあり、固定ワッチは今の例通り乗船期間中ずっと担当ワッチの時間帯は変わりません。
それに対し、変則ワッチは出航時間、ワッチをとった時間などにより時間帯が変わります。悪い時間帯の時もあればいい時間帯の時もあるので、個人的には変則ワッチがおすすめです。
荷役あり
荷物を積んで翌日揚げ荷役がある場合。
荷役あり時の1日のスケジュール|荷役+航海
▶︎8時荷役、2番目ワッチ
0600 | 起床|朝食 |
0645 | 荷役準備 |
0800 | 荷役開始 |
1200 | 荷役終了|昼食 |
1600 | ワッチ開始 |
2000 | ワッチ終了|夕食 |
自由時間|睡眠 | |
0400 | ワッチ開始 |
0700 | 荷役準備|朝食 |
0800 | 荷役開始 |
上記のようにワッチ終了前に荷役準備がくることがあります。基本的にワッチは4時間交代ですが、このような場合に限っては、3時間ほどで次の人に交代となります。
▶︎労働時間|9h15m(起床0600前に航海していてワッチがあればさらにプラス)
荷役なし
揚げ荷役場所へ2日間ほどかかる場合(茨城から鹿児島など)は空き時間に船のメンテナンスをします。
荷役なし時の1日のスケジュール|航海のみ
▶︎2番目ワッチ
0330 | 起床 |
0400 | ワッチ開始 |
0800 | ワッチ終了|朝食 |
サビ打ち、ペンキ塗り、ロープの手入れ 書類関係、船内清掃など(1h程度) |
|
1200 | 昼食|自由時間 |
1600 | ワッチ開始 |
2000 | ワッチ終了|夕食 |
自由時間|睡眠 | |
0400 | ワッチ開始 |
0800 | ワッチ終了|朝食 |
メンテナンス|自由時間 |
メンテナンス等が終わればあとは自由時間なので趣味の世界に入ることができます。
▶︎労働時間|9h00m
荷役あり|その後仮バース
荷物を揚げた同じ場所で翌日も積荷がある場合は、荷役後に仮バースといって船を岸壁につけて休むことができます。
荷役あり|航海なし時の1日のスケジュール
▶︎荷役だけ|前日から航海
0200 | ワッチ終了|仮眠 |
0700 | 起床|朝食|荷役準備 |
0900 | 荷役開始 |
1200 | 荷役終了 |
1300 | 仮バース|自由時間(翌日出航まで) |
岸壁に着岸したあとは、外に遊びに行くなり飲みに行くなり自由です。
▶︎労働時間|7h00m
休日|仮バース
航海→休息する岸壁に着岸する場合
[航海+仮バース]
▶︎1番目ワッチ(ゼロヨン)、7時着岸の場合
0000 | 起床|ワッチ開始 |
0400 | ワッチ終了|仮眠 |
0600 | 起床|着岸準備 |
0700 | 着岸完了|自由時間(翌日出航まで) |
▶︎労働時間|5h00m
この他にも待機中や沖アンカーで船内休日の場合は身体を休めるチャンスです。
- 仮バース|船を岸壁につけての休みのこと
- 沖アンカー|沖で錨(いかり)を沈めて停泊している状態のこと
見かけ上の労働時間は上記の通りですが、書類などの雑務も多くあります。さらに乗組員の食事を交代制で作る船は当番帯によってさらに労働時間は前後します(食事手当あり)
船乗りの一ヶ月の労働時間
僕が実際に貨物船に乗船していた時の労働時間です。※あくまで参考程度にご覧ください
1 | 5h50m | 16 | 9h00m |
2 | 6h50m | 17 | 7h20m |
3 | 8h25m | 18 | 7h10m |
4 | 5h35m | 19 | 5h00m |
5 | 8h50m | 20 | 休み |
6 | 11h00m | 21 | 9h05m |
7 | 6h50m | 22 | 休み |
8 | 7h20m | 23 | 5h10m |
9 | 8h30m | 24 | 8h40m |
10 | 10h40m | 25 | 9h00m |
11 | 11h40m | 26 | 9h50m |
12 | 6h00m | 27 | 5h50m |
13 | 12h10m | 28 | 5h00m |
14 | 11h30m | 29 | 10h00m |
15 | 12h20m | 30 | 8h00m |
▶︎労働時間|232h35m
▶︎残業時間|30h15m
こうみると、忙しい時とそうでない時との差が大きいことがわかりますね。
実際には休みの日も、
- 航海士→ロープ、フェンダーの状態|台風避難時にはアンカーが流されていないか(走錨)etc
- 機関士→発電機の計測|エンジンルーム内の見回り、点検etc
とそれぞれの持ち場を気にしなくてはならないので、船で完全なる休みというのは難しいのが現状です。その分、長期休暇が船の魅力でもあります。
走錨(そうびょう)→船が錨(いかり)を投じたまま流されること。強風|強潮や、海底の底質が錨に適さない時などに起こる。
船種による労働時間の違い
労働時間は船によって異なります。
平水区域を航海する船舶
平水区域とは、湖、川及び港内等の水域です。たとえば東京湾の大部分、伊勢湾、瀬戸内海の一部も含まれます。
▶︎参考図
タグボート
平水船であることが多く、陸と同じように定時で家に帰ることもできる。労働時間は基本1日8時間だが、大型船舶は夜間にも入港してくるので、夜間作業も週に数回ある。(会社によっては夜間作業がほとんどのところも)
ガット船
クレーンがついた船舶で主に砂|砂利|石材等を運ぶ作業船です。積み荷役は陸側が行いますが、揚げ荷役は船側のガット士が行います。航海士(または機関士)兼ガット士の方は休む暇もなく労働時間も長いですが、その分手当が多くもらえます。
【平水船】
湾内ということもあり航海時間が短いので、1日に荷物の積み揚げを行うことが多く労働時間が長くなりがちになる。逆に積み(又は揚げ)荷物だけの日もあり、そのような日は4時間ほどで終わることもある。
沿海区域を航海する船舶
沿海区域とは、おおむね日本、樺太の一部、朝鮮半島の海岸から20海里以内の水域です。
▶︎参考図
ケミカルタンカー
主に液体化学薬品を運ぶ船舶でポンプによって荷物の積み揚げを行います。ケミカル船特有の仕事としては船倉の洗浄です。薬品同士が混ざることは厳禁なので、積む薬品が変わるたびに洗浄しなければなりません。水洗い、洗剤洗い、お湯洗い、蒸気蒸し等薬品によって洗い方が異なり、長いときには洗浄だけで3時間ほどかかることもあります。
ポンプやボイラ、薬品の温度管理等は機関士の仕事なので、必然的に機関士の仕事量は多くなります。
貨物船
小麦|ウッドチップ|鋼材|スクラップ|一般貨物など様々な荷物を運ぶ貨物船。この船種も船倉の洗浄や掃き掃除等があります。鋼材船はダンネージの片付け作業が結構な力仕事になります。
【専用船】
様々な荷物を積む船とは逆で、同じ荷物しか積まない船舶のことを専用船と言います。同じ荷物ゆえに洗い物や片付け作業が少なく、体力的にも楽ですがその分手当が無くなります。
※一概に全ての船がこうというわけではないのであくまで参考に。
船を選ぶときのポイント
重要なのでもう一度言いますが、労働時間は船によって大きく異なります。
船と言っても様々な船種があり様々な勤務体系があるので、その分多様な働き方が出来ます。船を探す際には船舶がどのようなものを運び、どのような作業があるのかを熟知しておくといいですね。それが自分に合った船を見つける手がかりとなります。
隣の芝生は青く見えることもあるので、目当ての船種に乗船している人に話を聞いたり船会社に問い合わせてしっかり見極めていきましょう。
船乗りの残業|まとめ
- 船乗りの1日のスケジュール
・記事内参照 - 一ヶ月の労働時間|残業時間
・労働時間|200〜250h
・残業時間|40h前後
※船による - 船種による労働時間の違い|船を選ぶ時のポイント
・船によって労働時間は大きく変わるので、どのようなものを運び、どのような作業があるのかを熟知しておく必要がある
その通り!同じ船種でもやり方がまったく違うこともあるから、下調べはとても重要だね。
がっつりと働いて、長期休暇を楽しむ。このスタイルが自分に合うと思ったなら船をおすすめするよ!
船乗りのなり方が気になる人は下の記事も見てみてね!
ではでは、ごきげんよー!!